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片山 真理(かたやま まり)

「どこまでがあなたで、どこからがあなたではないのか?私とあなたは誰のもので、私たちはどこにいるのか?」(片山真理)

片山真理の実践の核心は、生きた彫刻、マネキン、そして社会を映し出すレンズとして使用する自身の身体の中で日々を生きることである。彼女の手の込んだセルフポートレートでは、等身大の人形や装飾された箱など、丹念に自作されたオブジェの山の中に自身を配置する。片山の手縫いされたオブジェ、彫刻・装飾された立体物、そして写真の組み合わせは、見る者に身体とそれを取り巻く環境や社会との複雑な関係を問いかける。

片山は9歳の時に先天性四肢疾患で両足を切断した後、“みんなと同じように” 生きるため身体的障害を隠してきたという。16歳になって初めて意識的に創作活動を始め、自分自身をアーティストとしてとらえるようになった。それ以来、片山は、形や大きさ、社会における役割を変化させ続ける自分の身体を、(人工的に作られた)美に対する世の中の執着や欲望に対する好奇心だけでなく、社会に近づき、反映し、つながるための創造的な手段として用いてきた。

同時に、片山の創作活動は、自室でのセルフポートレート撮影から、屋外に出たり、他人の身体を撮影したり、他人の手を借りたりすることへと徐々に広がっていった。一例を挙げると、2016年には直島に頻繁に通い、地元の女性による文楽人形劇団で人形遣いの手を撮影し、写真や手縫いのオブジェを展開する「bystander」シリーズを制作。これが片山にとって、他人の身体を作品に取り入れる初めての機会となった。さらに2023年、片山の「ハイヒール・プロジェクト」第2弾(プロジェクト自体は2011年にスタート)は、多くの個人や企業との長期にわたる共同作業によって、完全オーダーメイドによるハイヒールが完成させた。このような経験や、働き方が少しずつ広がっていく中で、片山は「共に生きる」ことの難しさと力強さを実感するとともに、自分の身体を自分以上によく知る義肢装具士や、障害福祉制度による社会的支援、家族や友人など、多くの人や支援の仕組みがあってこその自分の身体であり、その身体を自分のものだとは言い切れないことに気付かされる。

ただ、片山の作品は個人的な事柄を出発点としているが、その個人的な事柄は片山のテーマではない。彼女の作品や活動から生まれる問いかけや視点の本質は、常に社会に向けられている。

片山は言う。「セルフポートレートに写るのが自分だという意識はありません。私の中にあなたと同じものがある。私はあなたです。」これは、ポートレイトに写っているのは誰なのか、その身体は誰のものなのか、という疑問を観る者に抱かせる。また、なぜそのように捉えるのかを考えるきっかけにもなる。今日、個人はソーシャルメディアを通じて、自分の外見、居場所、行動、さらには過去の行いといったイメージを簡単に投稿し、共有することができる。「どこまでが自分であり、どこからが自分ではないのか。私とあなたは誰のもので、どこにいるのか?」これらの問いに対する答えは、さらに不明確になっているようだ。

片山のイメージやオブジェは、偏った視線や社会的なレッテル、何が正しいか正しくないかなど、身体や身体をめぐる複雑な問題についての根源的な問いを観る者に投げかける。片山が針と糸で一針一針オブジェを作り進めるときに感じるように、彼女の作品を体験することで、鑑賞者は自分の輪郭や形、社会における役割を、鏡に映すように確認することができるだろう。

片山真理は1987年生まれ、群馬県在住。アーティストとしての創作活動に加え、ファッションモデル、歌手、講演者としても活動。「第45回木村伊兵衛写真賞」をはじめ数々の賞を受賞し、過去15年間で約50の国際個展・グループ展に出品している。

【略歴】
1987 埼玉県生まれ、群馬県育ち
2010 群馬県立女子大学文学部美学美術史学科 卒業
2012 東京芸術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻 修了

【個展】
2023 『Cavern』/ Gallery ETHER、東京
2022 『possession』/ ふげん舎、東京
2022 『Mari Katayama』/ Kaunas Photography Gallery、リトアニア
2021 『leave-taking』/ Akio Nagasawa Gallery、東京
2021 『home again』/ ヨーロッパ写真美術館、パリ
2021 『Vieraita itsellemme – Strangers to Ourselves』/ ポリ美術館、ポリ
2020 『home again』/ 嶋臺ギャラリー 京都国際写真祭、京都
2019 『Mari Katayama』/ ミシガン大学美術館 Irving Stenn, Jr. Family Gallery 、アナーバー
2019 『Broken Heart』/ White Rainbow、ロンドン
2017 『19872017』/ ガトーフェスタハラダ本社ギャラリー、群馬
2017 『帰途』/ 群馬県立近代美術館 展示室 5、群馬
2016 『セルフポートレートとオブジェ』/ ルネスホール、岡山
2016 『アーティスト in 六区 vol.3 片山真理 / bystander』/ 宮浦ギャラリー六区、直島
2016 『Shadow Puppet – 3331 ART FAIR recommended artists』/ 3331 ギャラリー、東京
2015 『25 days in Tatsumachi Studio』/ ロブソンコーヒーアーツ前橋店、群馬
2014 『you’re mine』/ Traumaris、東京
2014 片山真理個展 / キッチンギャラリー、パリ
2009 片山真理個展 / ギャラリー J、群馬
2008 片山真理個展 / Slow Time、群馬

【グループ展 など】
2023 LOVE: Still Not the Lesser / 現代写真美術館、シカゴ
2023 Body Politics / トーランス美術館、カリフォルニア
2023 Ragusa Foto Festival / Palazzo Cosentini、ラグーザ
2023 Living A Performance Artist’s Life: 2023 Performance Art Documental Exhibition / MadeIn Art Museum、上海
2023 Mirror of self created by Hangar within the framework of PhotoBrussels Festival / ハンガーフォトアートセンター、ブリュッセル
2022 Contemporary Art Festival CHAOS : CALM / バンコクアートアンドカルチャーセンター、バンコク
2022 JAPAN. BODY_PERFORM_LIVE Resistance and Resilience in Japanese Contemporary Art / PAC Milano、ミラノ
2022 岡山芸術交流 2022 : DO WE DREAM UNDER THE SAME SKY / 岡山
2022 潜在景色 / アーツ前橋、群馬
2022 Empowerment / Kunstmuseum Wolfsburg, Wolfsburg
2022 Fashion Is a Verb: Art, Performance, and Identity / ウィリアムパターソン大学南ギャラリー、ニュージャージー州、アメリカ
2021 Look! Revelations on Art and Fashion / Marta Herford Museum for Art, Architecture, Design、ヘルフォルト、ドイツ
2021 リバーシブルな未来 日本・オーストラリアの現代写真/ 東京都写真美術館、東京
2021 北九州未来創造芸術祭 ART for SDGs / 北九州市立美術館、福岡
2021 第45回木村伊兵衛写真賞受賞作品展 片山真理写真展 横田大輔写真展 / ニコンプラザTHE GALLERY、大阪
2021 HOME/TOWN / 太田市美術館・図書館、群馬
2021 第45回木村伊兵衛写真賞受賞作品展 片山真理写真展 横田大輔写真展 / 新宿ニコンプラザTHE GALLERY、東京
2021 桐生の作家コーナー / 大川美術館、群馬
2021 コレクション展 / 愛知県美術館、名古屋
2021 アネケ・ヒーマン&クミ・ヒロイ、潮田 登久子、片山 真理、春木 麻衣子、細倉 真弓、そして、あなたの視点 / 資生堂ギャラリー、東京
2020 Jimei x Arles International Photo Festival / 三影堂厦門写真アートセンター、厦門
2020 Transhuman From Prosthetics to Cyborg Museum Ulm、ドイツ
2020 ライフ 生きることは、表現すること / 熊本市現代美術館、熊本
2019 第35回 写真の町東川賞受賞作家作品展 / 東川町文化ギャラリー、北海道
2019 第58回 ヴェネチア・ビエンナーレ:May You Live in Interesting Times / ジャルディーニ、アルセナーレ、ヴェネチア
2019 松本俊介 子どもの時間 / 大川美術館、群馬
2018 つまずく石の縁 -地域に生まれるアートの現場-/ 前橋中心市街地各所、群馬
2018 Body Politics: What Defines the Body?『身体をめぐる政治性:からだを定義づけるもの』/ KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY、東京
2018 How Many Miles to Babylon? / MIYAKO YOSHINAGA、ニューヨーク
2017 無垢と経験の写真日本の新進作家 vol. 14 / 東京都写真美術館、東京
2017 未来への狼火 / 太田市美術館・図書館、群馬
2017 Pro(s)thesis & Posthuman Complisities/ウィーン造形芸術アカデミー絵画館、ウィーン
2016 DAEGU PHOTO BIENNALE2016 Me in the Photography/Daegu Culture & Arts Center、大邱
2016 六本木クロッシング 2016展 : 僕の身体、あなたの声/ 森美術館、東京
2015 超克する少女たち / ギャルリーパリ、神奈川
2015 現在幽霊画展 / TAV ギャラリー、東京
2013 L’Experience Japonaise / フランス国立劇場 La Criee、マルセイユ
2013 あいちトリエンナーレ 2013 / 納屋橋会場、愛知
2013 KISS THE HEART#2 / 伊勢丹新宿店、東京
2012 明治大学和泉図書館ギャラリー展示 / 明治大学、東京
2012 自由について 2 メガネ + 片山真理 / トラウマリス、東京
2012 シブカル祭。/ PARCO、東京
2012 アートアワードトーキョーー丸の内 2012 / 行幸地下ギャラリー、東京
2012 東京藝術大学先端芸術表現科 卒業・修了制作展 2012 / BankART Studio NYK、神奈川
2011 CunCun 展 / ギャラリーコンシール渋谷、東京
2010 identity, body it. ―curated by Takashi Azumaya―/ NCA、東京
2009 First EXPO ART 1stJAPAJ / 大泉町文化ホール、群馬
2008 壁画制作 / 社会福祉法人上州水土舎、群馬
2008 ART MAGMA / 旧麻屋デパート、群馬
2006 第 58 回 日本アンデパンダン展 / 東京都美術館、東京
2005 群馬青年ビエンナーレ ’05 / 群馬県立近代美術館、群馬

【受賞】
2020 第45回木村伊兵衛写真賞
2019 第35回写真の町東川賞 新人作家賞
2015 3331 Art Fair 2015 -Various Collectors’ Prizes- 和多利浩一賞、吉本光宏賞、三宅里奈賞
2012 アートアワードトーキョー丸の内 2012 グランプリ
2005 第8 回 群馬青年ビエンナーレ ’05 奨励賞

【パブリックコレクション】
テート モダン(ロンドン)、RISD 美術館(ロードアイランド)、森美術館(東京)、東京都写真美術館(東京)、アマナコレクション(東京)、アーツ前橋(群馬)、大川美術館(群馬)、ガトーフェスタ ハラダ(群馬)、コレクション アントーニ デ ガールベルト(パリ、フランス)


【出版】
『GIFT』 United Vagabonds, 2019, ISBN: 978-4-908600-04-3
『Un certain désordre #1』 Edité par la Fondation Antoine de Galbert – collection Un certain désordre, 2021, ISBN: 978-2-9571947-1-1

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